小説「薬屋のひとりごと」感想

薬屋のひとりごと」はアニメ化され、現時点で第9話まで放送されている。これがなかなか人気で、今秋では上位に入る。そもそもアニメ放送前から全シリーズ累計2400万部を突破しているというので、当然の結果とも言える。私も珍しく数年前から知っていたし、ガンガン版のコミックスも買っている。そういう知名度と実力を持ったすごい作品なのは間違い無い。

 

コミックスを読み、アニメを観ると、メディアによる表現方法の違いに気付くようになる。そうして色々気にしていくうちに、原作小説が気になってくる。その第1巻がPrime Readingの対象になっていたので読んでみることにした。

 

原作小説は思っていた以上にあっさりしていた。コミックスがかなりの量の情景描写を補完していて、アニメはそれを受け継いで更に発展させていることがよく分かる。

私は小説に書かれた文章を読んだだけだと、それぞれの登場人物の大まかな行動が分かっても、細かい動作や気持ちまで読み取ることができなかった。

そう考えるとコミックスやアニメはもはや別物のように思えてくる。

 

この作品が人気である理由はなんだろう。後宮とミステリーという設定の組み合わせが斬新だったこと。猫猫のキャラクターが良かったこと。事件の原因はありがちだが、それが分かりやすさに繋がっていること。

登場人物同士の楽しげな会話劇。やはりキャラものとしてライトに楽しめることも良い。

確かにネットのレビューを読むと幅広い年代にも読まれているようだ。それぞれの要素が老若男女に少しずつ受けて大きなヒットになったということか。

 

1巻時点では分かりにくいが、一連の事件は緩やかに繋がっている。一応それをそれとなく示唆するモノローグもある。コミックスからの想像になるが、おそらく2巻で一区切りになるだろう。そうすると読者が全体を把握するには話が大きくなりすぎているように思える。だからこそ、それぞれの物語をあっさりと分かりやすく書いているのかもしれない。

 

個人的には続きを読みたいとは思えなかった。小説の文章自体にはあまり魅力を感じなかった。それならストーリーやキャラの掛け合いが同じなのだから、視覚的に美しい分、コミックスの方が楽しめる。

 

以上。