映画「さかなのこ」感想

好きなものに向かって真っ直ぐ突き進んで行くミー坊に憧れる。でも、それを実現するには、ミー坊を受け入れて応援してくれる周囲の人々が不可欠だった。

 

さかなクンの半生を描いたノンフィクションだと思って観始めたが、かなり脚色されているようで、さかなクン御本人も登場している。主人公のミー坊はパラレルワールドにおけるさかなクンだと思うことにした。

 

終始不思議な雰囲気が漂う作品だった。ミー坊の役者は女性で、少し中性的で、男性を演じているせいかもしれない。曖昧な存在を中心に置くことで雰囲気が変わる。普通のさかなクン似の男性が演じていたら堅くなるし、イケメンが演じていても嘘臭くなる。

 

登場人物のほとんどが優しい。というより、ミー坊のマイペースさに巻き込まれてしまって、彼に注目せざるを得なくなっている。どんな危機も困難も、彼の鈍感さや真っ直ぐで正直な態度が置き去りにしていく。次は何をやってくれるんだろうとワクワクしてくる。

 

ミー坊の全てを受け入れる母親が良かった。もう何だか頭おかしいんじゃないか、というレベルでミー坊を全肯定する。彼女がいなければミー坊がその才能を世界に自由に披露することはできなかったはずだ。

 

この不思議な雰囲気に塗り潰されたミー坊が持つ問題。ミー坊目線だからなのか言葉としては全く語られることは無く、ただ視聴者が察するしかない。作品の背景に薄っすら見え隠れする問題が、じわじわと不安感を与えてくる。でもミー坊目線では何も起きない。変な気分になる。

 

普通とは違う。でも普通とは何なんだ。この作品のテーマだった。多くの人は自分の中に普通とは違う何かを持っているはずだ。私もそうだ。それが劣っているとか優れているとかは関係ない。それを受け入れて鈍感に前向きに生きていけたら、きっと幸せなんだろうなと思った。

 

以上。